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創作活動

推し活依存の私と、パンダ師匠の28日契約 〜変わりたいなら書くしかない〜 第1章 絶望の果てに恩人のパンダ

第1章 絶望の果てに恩人のパンダ


私の3年間が終わった。

裏切られた。

「もう、なんでよりによって不倫なの。あんなおばさんと」

一人で居酒屋にきたのは、初めてだ。

仕事帰りの電車の中、スマホで見たニュース。
推しの不倫騒動に凹んだ。そして怒りが湧いた。許せなかった。

「お兄さん、ビールおかわりください」

私はそんなにお酒が大好きではない。
飲み会に呼ばれたら飲むけど、2、3杯ぐらいにしている。
酔っ払いはキライだ。

このときは、気がついたら居酒屋にいた。

「3年間だよ。ずっと応援してきたのに。
ファンクラブも入ったし、韓国遠征も行った。
アルバムは全部買った。お見送りでもっとたくさん買った。
いくらかけてきたと思ってんの?」

3年間の楽しかった日々を思い返す。

「はじめは歌も下手でさ、ダンスも微妙だったけど、
だんだん上手くなってきてさ、これからだって時なのに」

私の推しは、K-POPの男性アイドル。

笑顔がかわいくて、かっこいい人。
背が高くてスタイルがよくて、おしゃれで、話も上手で、
アイドルになるために生まれてきたような人だった。

みんな彼のことを本当に天使なんじゃないかって言うぐらい、
性格も良くて、優しくて明るい人だった。
韓国生まれだけど、英語も日本語も上手だった。
周りの人を明るくする太陽みたいな人だった。

そんな人が、不倫をしていた。

信じたくない。
そうだ、あれはフェイクニュースかもしれないよね。

そう思い、スマホでまたチェックする。
おばさんと写ってる動画があった。

AIとか合成かもしれないよね?

入念にチェック。

鼻にほくろがある。
顔も隠してないから、はっきり分かる。
すごい自然な表情だから、本人だ。

そして、このおばさん。
日本の女優だ。
たしか、50ぐらいじゃなかったっけ?

全然美人じゃないじゃん。
首のシワが目立つ。
この人演技そんなにうまくないじゃん。
事務所のゴリ押しでやってる人でしょ。
舞台やったことない人なんてさ、女優じゃないね。

手とか繋いじゃってさ。

「あームカつく。
なんでこんな目立つ場所で撮られてんだよ」

ホテルの入口で堂々と会っているなんて、信じられなかった。

許せない。もう、終わりだ。

私のお金は全部推しに使ってきた。
1年間で100万ぐらい使ってるよ。
3年間のほとんどの時間も推しに使ってきた。

「なんで、なんで不倫なの?ふつうの人と付き合えばいいじゃん。
ていうか、3年目なのに女遊びすんなよ。アイドルだろ。」

ビールを飲み干す。
「お兄さん、おかわり」

喉もかわくし、腹もへる。

唐揚げに大量のマヨネーズを付けて食べる。

付け合せのキャベツはいつも食べてるけど、今日は食べない。
野菜なんて本当は好きじゃない。
体のために食べてただけだ。
野菜から食べたら太らないとか言うからやってただけ。

今日は好きなものだけ食べるんだ。

焼きうどんを口いっぱいにほおばり、あまり噛まずに飲み込む。

「お兄さん、おかわりまだ?」

お店が忙しそうで、なかなか来ないビールにも腹が立ってきた。

怒りにまかせて、ふだん見るだけのインスタに、書き込んだ。

「不倫なんて許せません、脱退希望」

帰り道、ゲーセンに寄った。

ああ、もうこれからどうしよう。

普段はやらないUFOキャッチャーの前で乱暴にボタンを叩く。
3000円も使った。
私の味方はこの子だけだ。

ヤバイ。頭がズキズキする。

頭が痛くて目が覚めた。
自分の部屋の床で寝ていた。
腰も痛い。

お店でお金払ったよね。
なんにも覚えてないや。

ああ、飲みすぎた。

ベッドから起き、トイレに向かった。

「え?」

ドアが開かない。

ガチャガチャガチャ。

何度もドアノブを回してみるけど、開かない。

「え?どういうこと?」

ノックしてみる。

「コンコン」

「コンコンコン」

「え?誰かいるの?」

まだ、酔ってるんだろうか。
あたりを見渡してみる。

うん、私の部屋だ。
私のマンション。
部屋は間違ってない。

ジャー。
水が流れる音がして、ドアが開いた。

パンダの顔をしたでかい人が出てきた。

「ギャーーー」

こちらに近づいてくる。

「ギャーーー」

粗大ごみで出そうと思っていた、長い突っ張り棒を手に持ち振り上げる。

「ヤー、ヤー、ヤー、出てって、やだ、出てって」

思い切り力をこめて何度も叩く。

「いた、いた、いた、あんたなにしてんの?暴力やじ。
ちょっと、ちょっと、待ちなさい。今、説明するから」

パンダのでかい人に両手を押さえつけられて、突っ張り棒を取り上げられてしまった。

「あなた、なんなんですか?何してるんですか?
ここは、私の家ですよ」

「はいはい、分かってるじ。
こっちも来たくてきたんじゃないんやじ。
仕事だから来てるんやじ」

「まあまあ、座りなさい」
そう言いながら、パンダの人は、私のソファーに勝手に座った。

「あ、あなたの家じゃないんですよ」

「分かってるじ。まあ、落ち着いて」

私は立ったまま、様子を伺う。

「な、なんでここにいるんですか?あなた、なんなんですか?」

「私?、私は依頼を受けてやってきたんやじ。
あんた、昨日だいぶ飲んどったよね。
橋から落ちそうになってたんよ。
助けたの覚えとらんの?」

思い出そうとすると、頭がズキズキする。
え、橋から落ちそう?
そんなこと全然覚えてない。

「まずは、恩人に感謝するんやじ。
私はあんたの命の恩人やから」

「あー、このベーグル、私のですよね」

テーブルに、ベーグルのビニール袋があった。

「これ美味しかったわぁ、また買ってきて」

「あなた、なんで勝手に食べてるんですか、もう」

「あなたじゃない。私はアルテミスやじ」

「アルテミス?」

「そう、知らんのあんた?」
パンダの人は、マグカップで何か飲んでる。

「それ、私のカップですけど!」

「アルテミスって言ったら、ギリシャ神話の女神やじ。あんたそんなことも知らんの?
教養がないんやねえ」

「そんなこと、学校で習いませんよ」

「まあ、いいわ。あんたを変えるために、私がきたんやじ。あんた、この顔に覚えはないんかい?」

そういって、パンダの人は私に顔を近づけてきた。

「ちょっ、近い、怖いんですけど」
パンダなんて、覚えがない。
パンダなんて上野動物園で遠くから見たくらいで、ほとんど見えなくて、全然知らない。

「あっ」

昨日、ゲーセンで、確かパンダのぬいぐるみ。

「それやじ、あんたのパンダのぬいぐるみに変身したんやじ」

「なんで、顔だけなんですか?」

「それは、その、いろいろあって」
そう言うと、急に鼻息が荒くなり、パンダの人は、叫んだ。

「私のことはいいんやじ。あんた、今日からミッションやじ。
あんた、私の言うこと聞かんとバチがあたるからね」

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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